publicとpolicyとpowerと

技術と政治について書いていきます

なぜ公共政策領域か

 なぜ公共政策領域を対象と考えているか、ストレートに記載した記事が無かったので改めて書きます。きっかけは東日本大震災に関連する仕事です。

 

 東日本大震災については、それ自体が大きな課題の山だったということもありますが、更にいうと課題先進地と呼ばれた地域に関わることを通じて、次の社会に必要なモデルが創れるのではないかと期待したからでもありました。数年関わり続け、公共と民間の連携による社会課題の解決こそが、次世代に残すべき一つの考え方であると、ひとまず結論が出ました。そして、公共と民間を繋ぐものこそが、公共政策であると捉えています。

 

 公共政策というのは、法律と予算を指しているのですが、それが何を意味するか。

 

 また別途記事に書きますが、いまの20~30代は、逃げ切れない世代です。経済成長の面でも、社会保障の面でも、大きな変化が迫られます。それが受け身的に発生してしまうのか、そうなる前に自らが変化を起こすか、のいずれかになります。後者を考えた時に、その担い手となるのは、社会課題の解決を目指すNPOと、事業で社会変化を起こすベンチャーです。そして、社会課題の解決を目指す場合も、ベンチャーで0→1を作る場合も、本当に社会変革を起こそうと考えれば、政策の変革(法律と予算の変革)が必須で、そこの担い手や構造が、十分なものに全くなっていないと常々感じてきました。

 もちろんその受け止め手であり、担い手となる政治家自身も重要になり、そこに非効率が存在することは過去にも書きました。 

 

 そういった観点から、公共政策領域を対象とすることが、これまでとこれからの社会を分ける分水嶺になると考えており、事業として取り組む方がほとんどいないこの領域に、今後10年コミットしたいと考えるに至ったということです。 

 

 とても簡素な整理になりましたが、次回以降、少しずつまた補足してきます。

未経験なプロダクト開発を進める指針

 わたしはプロダクト開発の経験がありません。よって、いまのプロセスは「人に話を聞く」「本を読む」「ウェブで調べる」「実際にやってみる」の4つを組み合わせて進めています。その中で「カスタマー」と「カスタマーが抱える課題」「本当に求めているもの」を見出す過程で、特に指針にした本と、そこから得た重要点を書き連ねます。
 
 狙いは、自分の考えの整理と共に、この指針に対して、プロダクト開発に加わっている/これから加わる方から、率直な意見を頂きたいためです。理由は先のとおり、経験が無いため、よりよりプロセスを取り入れ続けたいからです。
 
 早速書いていきます。(数字はkindle記載の抜粋箇所のNo.です)

1. ジョブ理論

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「正しく掘り出すには、ひとたび有望な鉱脈を見つけたあとも、周囲を観察し、 ジョブの文脈を理解する必要がある。顧客が生活に引き入れたいと望むプロダクト/サービスを目指すのなら、顧客が求めている進歩の機能面だけでなく、社会的・感情的な側面も深く掘り下げ、水平方向にも広く目を向けなければならない」
 
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「片づけるべきジョブを明らかにすることは、最初の一歩にすぎない。あなたが売るのはプログレス(進歩)であって、プロダクトではない。顧客が心から雇用したいと望み、しかも繰り返し雇用したくなる解決策を生むには、顧客の片づけるべきジョブの文脈を深く理解し、遂行を妨げる障害物も把握しなければならない」
 
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「解決策のディティールは、イノベーションを成功させるうえできわめて重要である。ジョブのディティールは、ジョブスペックとして把握する。これには、顧客が求める進歩を機能的、感情的、社会的側面から記述したものや、受け入れられるトレードオフ、打ち負かすべき競合相手や、克服すべき顧客の障害物などが含まれる。ジョブスペックは、ジョブの深い奥行きと複雑さを、実行可能なイノベーションの指針に変換する際の青写真となる。」

 まず前提としてプロダクトが解決するのは顧客が抱えるジョブだという点を、本書を通じて理解しました。そして顧客が欲しいのはプロダクトではなく、プログレスであり、心から雇用したい解決策を提供するためにも、社会的・感情的な側面も深く理解・体感する必要があるという点です。

 
 今回の開発全般のプロセスは「起業の科学」「ビジネス・クリエーション!」「図解 リーン・スタートアップ成長戦略」などを参考にしており、その中でも特に「起業の科学」に記載されている「カスタマープロブレムフィット」「ソリューションプロブレムフィット」の部分を意識的に行っていますが、それもあって本書に書かれている「ジョブ」という概念とその背景の掘り下げの必要性は常に留意して進めています。

2. Inspired: 顧客の心を捉える製品の創り方

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プロダクトマネージャーには、ターゲットとする市場の顧客と共鳴する能力が絶対に必要〜中略〜
何よりも、そのターゲット市場に対する敬意と共感があるか? それとも、ターゲット市場を「啓蒙」することが自分の仕事だと考えているか
 
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まず、顧客に製品を買う気を起こさせる感情にどんなものがあるのかを特定して、優先順位を付けてしまってから、その感情をじっくり考えてみて、その製品以外には他のどこでその欲求を満足させることができるかを自分自身に問いかけてみよう。それが、あなたの本当の競争相手である。多くの場合、気にかけなければならない競争相手というのは、同じことをやろうとしているベンチャー企業や大手のポータルサイトなどではなくて、むしろ、インターネットを使わない別のサービスであったりすることに気づくだろ
 
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製品のアイデアを見つけ出すことに集中する プロダクトマネージャーの第一の任務は、価値のある、使いやすい、実現可能な製品のアイデアを見つけ出すことである。そういうものを見つけ出したという確証が得られるまでは、開発を始めても意味がない

 

 ターゲットのカスタマーに敬意と共感が持てるかという点は、わたし自身大事にしたい点であり、実際にプロダクトを通じない形での価値提供を一定期間実施することを経て、敬意と共感を実際に持てることを実感できたことが大きかったことを、本書を読み後から理解しました。
 
 またジョブ理論でも触れた様に、カスタマーの感情面の掘り下げが大事だという点も繰り返し学びました。これをする上でも先ほど触れた敬意と共感は大事だな〜と思う所です。またこちらの本は、プロダクトマネージャーという仕事の理解を進める上で役立っています。業務上で体験したことはないのですが、本書を片手にプロダクト開発のプロセスを進める過程でおぼろげながら見えて来ているような気がしています。

3.「欲しい」の本質~人を動かす隠れた真理「インサイト」の見つけ方~

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その「無意識」にも3つのレベルがあります。まず、「自分自身が気づいていない」というもっとも深い層にある場合。心理学や精神分析の世界で用いられるような無意識のイメージです。 そして、「認めたくないので意識の外に追いやっている」という心理。自分がその感情や考えを認めたくないので、心の奥底に押し込めている場合、追いやっている矛盾や葛藤の中に、人を動かす有効なヒントが含まれている場合があります。 最後は、顕在化している意識に近いですが「感じていることを言葉にできない」場合。「なんとなく感じている」ものの、それが自分の言葉として言語化されていない。また、自分の思考の中で整合性がとれない、といったもの
 
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インサイトは、「顧客を動かす隠れた心理」です。ですから、消費者自身も気づいていない、隠れた状態になっています。  一方、ニーズは「本人が明確に認識できている欲求」で、顕在化しています。  インサイトは隠れていますから、競合他社も知りません。従って、その心理を充たすアイデアはまだ市場で具体化されていない状態
 
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ニーズは、高度成長の時代(日本であれば1980年代後半まで)の「だいたい、良くない時代」に役立っていた考え方です。一方、インサイトは、低成長の時代に役立つ考え方です(日本であれば1980年代後半以降)。

 これも繰り返し書いてきたカスタマー理解を深める上で参考にしています。無意識には段階があるということ、ニーズとインサイトには違いがあり、それが時代背景の中でなぜ重要になっているのかという点です。

 
 読んで理解した気になっているのと、出来ている状態には、天と地の差があるので、これらを持って会得しているとは全く思っていませんが、経験がないからこそ、徹底して「人に話を聞く」「本を読む」「ウェブで調べる」「実際にやってみる」の4つを組み合わせて進めていく敷かないと考えています。
 
このプロセス自体をより良くしていきたいので、プロダクト開発に加わっている/これから加わる方ともに、是非、宜しくお願いします!!

プロダクトというアプローチの理由

 公共領域のVertical SaaS提供を通じて「公共政策情報を人とテクノロジーの力で効率化し、ルールメイカーを伴走する」ことから着手しますと書きました。もう少しいま目指している世界観と、なぜプロダクトというアプローチなのか、を書いてみます。

 

 いまはまず2段階での展開を考えています。

 1. 政治家にとって安心感をもたらす個人向けSaaSを通じた政治活動の効率化

    2. 民間を含むルールメイカーに対する公共政策の情報・ネットワークインフラを通じた公共政策活動の効率化

 の順番です。

 

 1は何度か触れているように政治家個人に対する価値提供を実現するプロダクトです。その上で2は、1を通じて培う政治家のネットワークと、プロダクトへのリテンションを通じて、ルールメイクを実現したい民間・NPO等のプレイヤーに対するプラットホームを提供します。それは1を通じて蓄積した政策情報のデータベースや、ネットワーク情報の提供です。社名の由来となっている医療業界のm3を参考とした構想です。

 

 それらの核となるプロダクトを第一弾で開発しているわけですが、なぜプロダクトに拘るのか。それはこれまでこの世界は属人のスキルやネットワークに基づくルールがあり、社会としての知見が蓄積できていなかった、ということに問題意識があるからです。そもそも公共政策を支えている国の行政府である官僚は異動が多くノウハウが溜まらない構造になっていました。また地方の行政府は縦割りで自治体毎にノウハウが展開されてない面もあり、公共政策領域における知の断絶があったと認識しています。

 

 わたしは、社会を少しでも前進させアップデートして、次世代により良い形で社会を渡していくことが必須だと考えています。その為にも「政策」という後から幾らでも変わってしまう価値ではなく、プロダクトを通じた仕組み・エコシステムを残すことで、変わらない価値を創ることができると信じているのです。上記の問題意識を解決するプロダクトを提供することが、この領域におけるルールチェンジになると確信しています。

 

 少しずつ、公共領域の効率化に対する注目度が高まっています。その中でわたしは直近の事業の山は2021年春に来ると考えていますが、そこに向けてスピード感を上げていける様、最初の一歩にフォーカスを絞り続け確実に進んでいきます。

与えたい「安心感」という価値

 前回、情報のアクセシビリティへのチャレンジと、信頼関係のチャレンジを書きました。どちらかというと機能面の話が多くなったので今回は改めて、本事業・プロダクトを通じて、カスタマーに与えたい価値を感情面から整理しました。
 
 それは「安心感」です。
 
 ルールメイクする立場の人は、既得権と戦うので味方が必要という点が大前提として上げられます。政治家が全員とは言えないかもしれませんが、何らかの政策的チャレンジをすると、様々なステークホルダーと戦う必要がある為です。
 当初、この事業を考え始めた際には、まずそういったルールメイクする立場の人を支えたいという想いから始まっています。これは原点であり、今後も変わらない点になりますが、そういった方をイメージした時にどんな価値を提供したいかというと「安心感」というのがしっくり来るワードです。
 
 正確には「安心感を与える伴走型のプロダクト・サービスとなっており、どんなシーンにおいてもそのカスタマー目線での価値提供を行う。結果、ルールメイカーである政治家が政策実現までの長いプロセスを粘り強く進み続ける」というイメージです。それが実現できる機能であり、デザインであり、サポート体制を作りたいという事になります。
 
 上記でほぼ全てですが、背景の補足をします。政治家は基本的には党や会派がありながら、個人事業主であり1人です。そして選挙に落ちれればただの人になる点や、選挙もあるので周囲を信頼しづらい環境があります。また周囲からは「政治家」として常に見られる中で、スケジュールが次から次へと来る状況に対して応えていかなければいけない環境があります。
 
 政治家と一口にいっても様々なタイプがありますが、わたしが想定しているカスタマー像を考えると、上記がイメージとなります。
 
 
 日々忙しく孤独な面を抱えるカスタマーに対して、政策情報の提供を通じて、安心感を与え、結果、政策実現を支える、そんなプロダクト・サービス開発に携わりたい方、是非、お気軽にご連絡下さい!

公共を変革する技術とデザインと

 今日はカスタマーを絞った背景とカスタマーの抱える課題について書きます。

 

 当初はルールメイカーに顧客を絞るということを決めた所から構想はスタートしています。今後の社会のあり方を考える上で、何がセンターピンかということを長い間模索し、それは公共と民間の間にあるという結論に至ったということ、そして、また自分の時間は社会に本気で向き合っている人のために使いたいと思ったこと、この2つが主な理由です。

 

 それを前提にし、そこからはルールメイカーを対象にした事業プランを考え、戦略として政治領域にしたという背景です。戦略として政治領域にした形ではありますが、政治と政治家に向き合っていった結果として、過去に書いた様に、顧客への共感を感じると共に、彼らが抱える課題の存在にも気づき、結果として、完全に最初は政治家をカスタマーとしたものにすることを決めることが出来ました。

 

 そこから見えた来たのは「情報のアクセシビリティ」と「信頼関係」の課題です。何度か書いている様に公共政策領域は、情報源が多すぎるため、玉石混淆であり、 色々な情報提供者や媒体がありますが、本当にカスタマー目線のものはないという状況があります。また当たり前ですが政策として使うには、使える形で提供することが必要です。

 

 いずれにせよ主には前者の理由で、必要な人に必要な情報が届いていないという構造があります。よってカスタマー目線で、必要なもの・タイミング・形で情報を提供することを通じて、アクセシビリティを高めることがチャレンジしたい課題の1つです。

 

 またそれらを本来的には外部の力を使いながら、彼ら自身が取り組むべき所ではありますが、政治というある種の闘争という側面から見ると、簡単に外部の人を信頼できるものでもなく、また経験として業務の切り出しと依頼経験が少ないことが理由で、そういった外部の力を借りることに顕在的・潜在的コストが存在します。

 よってそういった信頼関係が外部環境に無い中で、顧客の負担がゼロに近い形で、アクセシビリティを高めることがチャレンジの2つ目になります。

 

 もちろんその上で、情報の質を高めていくことが重要で、 多種多様な新しい政策テーマをキャッチアップし続けることやファクトを確実に抑え続けることも必要になりますが、上記2つが土台に無い限りはこれまでと同様、本当に到達する情報にはならないです。

 

 こういった状況を考えた時に、カスタマー目線で扱いやすいデザイン・UIで、必要最小限の基礎情報を元に的確にその人にとって必要な情報を届ける技術が必要になります。またそれらを前提に質の高い情報を常に更新し続け、その質を高めるデータ構造を保持することが必要です。

 

 これらはわたしの力だけでは当然到達できないことなので、ぜひルールメイカーである政治家が抱える課題を解決するサービス開発を、ご一緒できる仲間の参画、お待ちします!

 

Publicのプレゼンス

 今日もあるエンジニアの方と、事業構想について簡単に説明をし、今後の社会のあり方について議論をしました。その方に言われたのは「社会における政治のプレゼンスは今後どうなるのか」という点です。この点は非常に重要で、なぜこの領域なのか、を説明する上で外せない視点なので改めて書きます。

 

 まず政治のプレゼンスは次の20年で落ちます。政治が動かせるお金は税収減に伴い縮小すると言う点、そして、お金が社会に与える影響自体も減るからです。そして法律は社会変化のスピードが早まるに従いその影響度は低くなります。結果、お金(予算)や法律を決めることができ、それらを通じて社会に影響を与える政治家の物理的な力は縮小するということです。

 またメッセージ機能としての政治の影響力もまた低下します。過去であれば所得倍増計画を打ち出した池田勇人首相の時代がありましたが、これからは国主導で1つの方向性に進んでいくということは考えづらいです。それは過去に触れたように権力が分散化し、政治やメディアの力といった観念的な力が縮小するためです。社会を前に進めるのが、多様化した個人のモチベーションになるということです。

 

 そんな中で、政治領域が担うもの/重要性と、そこに関わることの意義はどこにあるのか。それは政治にしか出来ない意思決定が次の10年にやってくること、漸進的に社会を前に進め続けることが同時多発的に必要なこと、更には社会変化が加速化する中でイノベーションを阻害しないことが求められる、これらが理由で、そこに政治が担う役割があります。

 

 20年単位ではプレゼンスが下がると書きましたが、その内この10年が持つ意味合いは大きいです。20年後の政治のあり方は読めず今と大きく変わっていることは間違いないですが、この10年で見ると緩やかなプレゼンスの低下はあれど、政治が決める予算・方向性が与える影響はまだまだ大きいです。その中でこれまで後回しにしてきた短期的には痛みを伴う未来への投資としての意思決定が必要になります。縮小するパイの中で、本当に必要な再分配を実現する必要もまたあります。それは政治にしか出来ないことです。

 

 そして、より分権が進む中でこの10年で各地で漸進的に社会を前に進めるための政治もまた必要です。これは上記と同様に、次の10年でも引き続き扱うお金が減りながらもまだまだ量としては存在し、それを活用して政治がイノベーションは起こせなくとも、少しずつでも意味ある政策を実現し、人口減少と高齢化の中、目の前に起こる社会課題に向かい続けることが重要なためです。

 

 更に次の10年で技術革新は加速化します。その際に法律や公共がその変化に追いつかないことは容易に想像がつきますが、その際に民間の動きであるイノベーションを阻害しないことが重要です。その緩和を適切に行うこともまた政治にしか出来ないことです。

 

 これらが次の10年政治が果たす役割であり関わる意義だと考えていますが、わたしの中での一番の理由は、政治領域の課題と可能性を知ってしまったから、という点があげられます。

  今日の方も、社会のあり方に関心と課題感を持ち、実際に行動を起こしている素晴らしい方でしたが、それでも政治にはどちらかというと無関心だと言っていました。それは接点が少ないということもあると思いますが、変わる実感が無いことも原因です。

 いまはほとんどの方にとって政治に参加しようと思えば、一票を投票という形で意思表示として示すだけです。それは重要な関わり方ですが、政治へのアクセスは意図すればそれほど難しいことではなく、また、アプローチ・内容が合理的であればアクセスを通じて影響を与えることが可能でそれは知られていないことが多いです。その結果が社会に与える影響の大きさを知れば、その可能性に魅力を感じます。また課題というのも世間一般で言われる課題というよりは、過去に書いているように、目の前にいる魅力的な対象が多くの非効率を抱えているという課題です。

 

 そんな中、多くの方々が何らかの課題感や一納言持っていながら、諦めと他責があるのもまたこの領域です。

 わたしは何らかの対象に可能性と関わる意義を感じている中で、誰もそこに本気になっていない時にやる気が高まる人間ということもありまして笑、こういった個人の特性も相まって、この領域を次の10年のテーマにすることを決めました。

 

 よって今日を総括すると、政治が果たす役割は長い目線で見ると変化・その役割も緩やかに小さくなるが、少なくとも次の10年においては重要、というのが政治・Publicのプレゼンスである、ということです。

 

 少しでも興味を持った方は是非お話しましょう!

Legal techよりLaw makeをhackする

 リーガルテックが話題になることが増えました。最近だと弁護士ドットコムのクラウドサインが注目されました。この分野は引き続き多くのプレイヤーが集まりますが、法律を出来た側から見るのが弁護士業界であり、それをテクノロジーで効率化するのが「リーガルテック」と認識してます。

 

 わたしはlaw make、即ち、法律を作る過程/出来る前の過程をテクノロジーでhackしようという考えを持っています。hackというと大げさですが、今のプロセスや非効率の要因を深く理解し、それをテクノロジーで解決できるプロダクトを提供したいということです。あまり知られていないかもしれませんが、政治家はpolicianだけではなく、low makerとも英訳されます。名前の通り「法律を作る人」です。正確には「法律と予算を決める(rule make)」のが政治家の仕事で、その過程は前回触れている様に、非効率が構造的に存在します。

 

 そんな中、いまlaw make/rule makeの過程を既にhackしている人たちがいます。それはロビイング会社や業界団体・利益団体などです。最近話題の所だと、受動喫煙防止条例の件で国や都が話題になっていますが、条例を反対しているタバコ関連企業(やその支持を受ける政治家)が裏側で動いているというのは周知の事実です。必ずしもロビイング会社や業界団体・利益団体が悪ではないですが、上記の通り、社会的に見ると明らかにネガティブな事象に関しても、自社・自分たちの利益確保のために政治に働きかけているケースは、私たちの知らない間に起こっており、上記のケースは最たる例です。

 技術と遠いはずのこの業界、人種が「hackしている」と言うと変な感じですが、プロセスや構造、行動原理を把握し、上手く活用していると言う点でlaw make/rule makeの過程をhackしていると言え、知らない間に社会的な損失を受け、その事にさえ気づかない人たちが多くいるのです。

 これまでの人口が増え、経済成長が続いていた時代においては、それも認められましたが、これから経済成長は鈍化し、限られた税金・パイを効率よく配分する必要が出てくる為、本当に必要な課題/分野においてrule makeをしていくことが重要です。そのことは目に見えているので、上記の構造を変え、Law make/rule makeの過程を正しくhackしたい、と考えているのです...!

 

 またスタートアップなどイノベーションを生む企業においても、rule makeは無縁ではないです。過去の日経新聞の記事を取り上げます。「イノベーションとルール」という特集です。法務インサイドのコラムですね。全4回に渡り、日本企業のルールメイキングについて課題提起をしています。

 ぜひ、下記より全文をご覧頂きたいですが、少し引用しつつ解説します。

・ルールメーク、日本の課題とは 専門家に聞く イノベーションとルール(1)

・企業とルール、どう向き合う 専門家に聞くイノベーションとルール(2)

・法支援をビジネスの追い風に 専門家に聞くイノベーションとルール(3)

・物作りからルール作りへ 専門家に聞く イノベーションとルール(4)

 

イノベーションとロビイング

 「新しい技術やビジネスモデルを展開する企業への法的アドバイスを数多く手掛ける水野祐弁護士」の発言です。

・「ルールは現実を後追いして作られるものだが、インターネットの進展によって現在は法と現実が乖離(かいり)する『法の後れ(Law Lag)』がこれまでになく広がっている時代だ。グレーゾーンの解釈が最も難しく、面白い時代ともいえる。ルールを『超える』というのは破ることではなく、ルールを主体的に考えて関わり、生かしていくべきだと考えている」
 ・「もちろん、ビジネスをする上で法務部門を早い段階で巻き込んでいくのも大事だ。法律家には法律で全てを考えがちな傾向があるが、正解はサービスの仕様や当局とのコミュニケーション(ロビイング・広報)という場合も増えている。最適解が法律の枠内にとどまらないことも踏まえ、幅広い視野を持ったイノベーションの担い手になっていきたい」 

 法律の分野にもイノベーションやクリエイティブが求められつつ有ります。企業の法務というと法律に照らし合わせて締結する契約書をチェックする、という役割だとイメージとして持ちがちですが、インターネットの進展により、企業がどう政府と付き合うか、法律と向き合うか、その上で、どういったルール形成を行うべきか、が問われる時代になりました。政策形成という側面で効率化の必要性をこれまで取り上げましたが、企業の法律への向き合い方、ルールづくりにも変革が求められています。

 これは先ほど書いた法律を出来た側から見るのではなく作る側から見るということですね。

 

ベンチャー企業とロビイング

 政府とベンチャー企業という一見相反するセクターにおけるルールメイキングの必要性も述べられています。マネーフォワードの瀧氏は、提言+具体的な事業形成が大事だと述べており、また、LINEの江口氏も法的な動きを予見し先だって対応する必要性を強調しています。

 ・「ロビイングを頑張るという企業もあるが、単純にモノを言うだけでは響かない。大企業はレントシーキング(都合良く規制を設定)して限られたパイを奪ってくるが、ベンチャーは新しい市場を作ることで、今はできないことを提言していくことが大事だ。『存在するユーザー数×便利さ』の面積を広くしていくことで、影響力を高めていくほうがいい」(フィンテックベンチャーであるマネーフォワード(東京・港)の瀧俊雄・フィンテック研究所長)

・ 「そもそも法律とは、過去誰かが何かをやらかしたからあるもの。イノベーションとは新しいことであり、誤解を招いてはいけないが、法の隙間を狙うことでもある。それを不用意にやればたたかれてしまうので、先に『法の壁』を予見し、変えていく。そういう仕組みを作っておけば、我々の後に続いてくる革新的な企業たちにも役立ててもらえる。今、ネット分野で先頭を走っているLINEとしての社会貢献にもつながると思っている」(LINEの江口清貴・公共政策室長) 

・「2014年1月に仮想通貨の取引所を立ち上げた。その翌月にマウントゴックスが破綻し、ビットコインすべてが詐欺のように扱われる時代もあった。『このままでは終わる』と思いロビイングを決意した。日本価値記録事業者協会を立ち上げて、多くの業界団体、政府、省庁の関係者に説明をした。最初は『ふーん』と言われて終わりで、非常にネガティブな反応だった。もちろん自主規制に反対する事業者もいたが、粘り強くロビイングを続けて、施行に至った」(仮想通貨取引所を運営するビットフライヤー(東京・港)の加納裕三社長)

 

 こういった形で日本における新興企業がrule makeに関わっていくケースが増えて来ており、今後社会を一変させる様な技術であれば尚さら、社会実装に際してrule makeへの関与が必要になります。

 

 わたしはこういった新しい市場を創造する企業や、旧来のプレイヤーにより社会的に損失を被る方々、そして、いま目の前で困っている政治家の方々を助けたいという想いでこの分野に興味を持ち、動き始め、その想いはふつふつと日々募っています。いち早く、これらの課題解決に寄与できる様、引き続きサービス/プロダクト開発を進めていきます!